ポリエステルを染色する染料といえば、一般に「分散染料」ですが、
この分散染料も、元々は水には不溶なのですが、界面活性剤で水中に分散させ、
それを高温・高圧化でポリエステル繊維の中に分散させて(押し込むイメージ)
染色していく「染料」です。 水に溶けるのが「染料」のはずなのに、実際は
水に溶けずに分散するだけ、繊維と反応するわけでもなく、染着するとなると、
この「分散染料」もなんだか「顔料」っぽいようにも感じられますよね。。
結論を言ってしまうと、繊維の世界ではシンプルに、「バインダー」(糊)を
使用して、色の粒を繊維にくっつけるのが「顔料」、それ以外の力で染着させる
のが「染料」、ということになっていると思います。
スクリーンプリントや、無地染めの場合、昔から「顔料プリント」や
「顔料染め」という手法はあって、どちらかというと工程がシンプルな(発色
(蒸し)・洗い工程がない)ことから、安価な商品に使われてきました。
「顔料(プリント・染め)は安物」という感覚が、いまだに繊維の世界に
根強く残っているのは、このためですね。
「染料」と「顔料」、違いはなんとなく分かっている方は多いと思いますが、
実際にその「境目」となると、実は、結構微妙な話になります。
大まかに言ってしまうと、「染料」は水や油などの溶剤に溶けるもの、
「顔料」は溶剤に溶けない(分散しているだけ)もの。 染色法的に言えば、
「染料」は素材と何らかの「反応」をして染着する(色を付ける)もの、
「顔料」は色の粒を素材に貼り付けるもの、という感じかと思います。
いずれも歴史は古く、「染料」は天然染料(例えば「藍」(あい)はインド・中国で
染色に応用され、エジプトや地中海沿岸に広まった染料で、ミイラの巻布等にも
使用)から始まり、「顔料」といえば、ラスコーの洞窟画から、古代遺跡や神社仏閣、
様々なものを彩ってきました。
現在でもデニム等で広く利用されている「染料」の「藍」(indigo)ですが、
実際の染色原理(実際は結構複雑)を簡単に言うと、植物の「藍」から取った色素を
アルカリ条件で水溶性にしたものを、繊維素材に浸透させ、酸化させることで
(不溶化)固着させるというもの。酸化する際に、あの鮮やかなブルーが発色するので、
その点は明らかに「染料」的なのですが、一方で繊維の中に入って不溶化して固着する
ところは、少し「顔料」的ともいえます。(擦って色が落ちるのは、顔料の専売特許(笑)
デニムは洗うと表面から「色落ち」して、あの独特の雰囲気が出せるわけですが、普通の
「染料」ではマネができません。) 。。。微妙ですよね。(笑)
新規システム稼働と、それに伴う事務所の移転の忙しさにかまけて、
しばらく更新を怠っていたこのブログですが、ようやく新システムも
順調に稼働しだしたこともあり、ぼちぼち再開したいと思います。
意外な方から「ブログ、読んでますよ」言われることも増えてきて、
いつまでもサボっていられないという、うれしいプレッシャーもあり、
一方で、新システムはまだ正式販売されていない最新型プリンターを
使用しているため、ここで公開していいことと、悪いことも?あるという
戸惑いの中での再開となります(笑)
今回の最新型プリンターは、「水を使わない」デジタルプリンターで、
いわゆるエコ&サステナブルを追求した、次世代型のプリンターです。
生地を染めるのには、従来当社も使用してきた「染料」ではなく、
「顔料」を使用しています。染色をご存知の方であれば、「顔料」なら
「水を使わない」のは当たり前(=たいしたことない)と思われると
思いますが、実はこのプリンター、ただの顔料デジタルプリンターでは
ないんです。。。
昨年から進めていました事務所の移転と新規プリンターの導入ですが、
ようやく何とか完了して、新規プリンターも順調に稼働をスタートいたしました。
関係者の皆様には、移転期間中、大変ご迷惑をおかけしましたが、
おかげさまで、新事務所で心機一転、業務に取り掛かっております。
新しいプリンターは、今までのインクジェットプリンターの概念を覆す、
「水を使用しない」デジタルプリンターで、今後、テキスタイル染色の一つの大きな流れに
なってくると考えています。
プリントできる素材も、多岐にわたりますので、今までプリント・染色の難しかった、
あんな素材やこんな生地にも、楽に、スピーディーに、プリントできるかもしれません。
ご興味のある方は、ご遠慮なく、ご相談をお寄せください。
お取引先様にはご迷惑をお掛けしておりますが、現在当社は
新規プリントライン導入に合わせ、事務所の移転を進めております。
工事の都合上、現在仮事務所(大阪市淀川区宮原)にて営業を行っており、
大阪市内で進めている工事が完了次第、本移転の予定(9月中予定)です。
ご不便をおかけしますが、新たなチャレンジがスタートしますので、
今しばらく御辛抱いただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
今回のテーマ、そもそも、洗えるか、洗えないか、は何を基準にして言っているのでしょうか?
昔チュニジアに旅行で行った時に、お土産に買ってきた敷物があったのですが、(売ってた
おじさんは「コットン100%!」言ってましたが、どう見てもレーヨン100%(笑)。
同じセルロースだから良いでしょ、的な?(笑))
日本に帰って、とりあえず1回洗ってから、と思って洗濯機で一回ししたら、、、バラバラに
なってしまいました。(本当にバラバラ(笑) 色とりどりのワタの塊のようになって、
洗濯機の水面にぷかぷか浮いて、、、(笑) 後片付けがめちゃくちゃ大変でした。。。
(「水溶性ビニロン」でも使っていたのでしょうね。。))
これは「洗えない」(笑)という分かりやすい一例ですが、普通、大抵の繊維製品は、水と洗剤で、
洗うことは洗えます。問題は洗った後に、極端に縮んでしまったり、表面が毛羽立ってしまったり、
色が褪せてしまったり、こうした主に外形上の顕著な変化が起きた場合、「もう着られない
(使えない)」=「洗えない」(製品)ということになるのだと思います。
そういう意味では、綿100%の製品は、十分普通に「洗えます」。ただし、浴衣などのように
条件付き(一手間が必要)のものもありますが。生地の加工によって、多少縮んだり、毛羽立つことも
ありますが、ほとんどの場合、問題ない(気にならない)レベルです。
最近巷には「機能性」をうたった合成繊維の製品が増えていますが、暑い夏を乗り切るためにも、
天然の高機能(吸水性・吸湿性の高い)繊維である綿製品をどんどん着て、どんどん洗ってほしいと
切に願っています(笑)
さて、戦い明けて、ヨレヨレになった浴衣をいざ洗濯機へ。きちんと「洗剤」を入れて
十分な水量で手洗いモードで、、。シワを伸ばして、陰干ししたら、、あれ?なんか買ったときと
雰囲気がだいぶ違う。。。そうなんです。浴衣って、売っている時には「糊」がついていて
それであのキリっとしたフォルムが保たれているんですが、ご家庭で洗った後も「糊付け」を
しないと、あの状態には戻りません。。。少々面倒ではありますが、もうひと手間かけて
糊付けまで行えば、クリーニング上がりのような仕上がりに、、(後は慣れと要領で、、(笑))
そもそも、浴衣とか、旅館に行った時の白いシーツ・カバーとか、「糊」が付いているのは
何故なのでしょうか? 元々は汚れ落ちを良くする等の理由が主だったように思いますが、
今でも残っているのは、浴衣やシャツなどは、型崩れを防ぐ(シャキッとしたフォルムを維持)
シーツなどは、ドライなタッチでさわやかに、という意味合いが大きいように思います。
今では、シャツは「形態安定」というのが主流になって、ご家庭でシャツに糊付けを行う
という機会も減っているように思いますし、シーツやカバーもどちらかと言えば、今はソフトで
軽いものが好まれて、昔ながらの「白カバー」というのはなかなか見かけなくなりました。
そういう意味では、浴衣はまだ、糊付けが当たり前に残っている、貴重な存在かもしれません。
もちろん、浴衣もポリエステル100%素材のものも増え(業務用、特に観光地で外人さんが
来ているような浴衣はほとんど全てポリエステルですね)、洗ってそのまま着られるタイプが
その内、当たり前になるのかもしれませんが。。。
「水で洗っただけ、なんですけど。。。」 私たちのところに来る「クレーム」で、よく
そう仰る方がいます。水で洗っただけなのに、色が落ちた、色移りした、等のクレームです。
え!?ナレッジさんの製品って、そんな簡単に色落ちしたり、色移りしたりする「不良品」
なんですか?国産のきちんとしたモノ作りをうたっているのに!?と驚かれるかもしれませんが、
実は、染料で染色した製品は、条件が揃えば、色落ちしたり色移りしたりする可能性はゼロでは
ないんです。一般に使用されている染料(染色性能の高い化学染料)は、通常、生地に染みこませた
量の、半分以下しか染着しないため、未染着の染料は洗い流さないと、色落ち・色移りの原因と
なります。この水洗工程にどれだけの水と労力をかけるかで、製品となった場合の堅牢度が
変わってくるわけで、おそらくその点で、日本の染工場さんは、世界トップレベルで水と労力を
かけていらっしゃると思います。それでも、色落ち・色泣きの可能性はゼロではありません。
そこで一番の「染工場泣かせ」となるのは、冒頭の「水で洗っただけ」なんです。それも、
水に一晩漬けただけ、とか。
染料は水溶性なので、未染着のものは、水やお湯につけて時間をかければ、必ず溶け出してきます。
また、水につけた繊維が膨潤すれば繊維の摩擦も大きくなって、その状態でゴリゴリ洗えば、
繊維の表面もダメージを受けやすく、毛羽立って色も褪せたように見えてきます。
そんな、問題に対応してくれるのが、「洗剤」です。一般の方ですと、「洗剤」=汚れが落ちる=
色も落ちる?と誤解されている場合もあるようですが、今の洗濯洗剤は非常に進化していますので、
未染着の染料が溶け出しても、再付着を防いでくれますし(汚れを落としても再付着したら意味ない
ですよね)、洗濯中の摩擦によるダメージを防ぎ、色落ちも防止してくれます。
洗う時の「気遣い」と申し上げましたが、多めの水と、適正な量の洗剤で、やさしく洗うだけ、
(できるだけ高浴比:繊維に対して多い水の量:で、洗剤は適正量で(多すぎるとすすぎが大変))
ということになります。これなら、ご家庭でも洗濯できますよね。
子供の頃、食卓に煮魚や焼き魚が出ると、必ず「この魚の「皮」って食べられるの?」と
聞いていました。すると、母親は「食べられる」「たべられない」を、実に即座に回答してくれて
おかげで我々子供たちは安心して皮まで食べたり、残したり、、まさに我々にとって母親は
「魚マイスター」のごとき存在でした。(他にも色々なマイスターでありましたが。。(笑))
さて、綿(コットン)の浴衣は洗えるか、という問題ですが、浴衣も「着物」の一種、という
感覚からなのか、ネットで「浴衣の洗い方」を検索すると、「エ〇ールで浸置き洗い」とか
「シミ抜きは・・」等出てきますので、皆さん非常に気を使っているのが分かります。
ただ、我々繊維業界の人間からすれば、浴衣は綿の普通の生地ですので、普通に洗えます(笑)
いわゆる「着物」は「絹(シルク)」ですので、素材もデリケートで、染料もデリケート、
普通に洗うとダメージを受けたり、色落ちしたり、ロクなことになりません。(知り合いに
それでもなんでも洗濯機で洗ってみる!というツワモノもいますが、一般の方には
あまりお勧めできません(笑)) 一方で、綿の浴衣は、綿なのでガンガン洗っても全く
問題がないか、といえば、それはお話が少し違ってきます。綿はシルクに比べれば丈夫な繊維で
タオルや下着、寝具からシャツ・ブラウス等に至るまで、様々な身の廻り品に使用されており
普通に毎日洗濯されていると思いますが、実は洗濯によって全くダメージがないかと言えば、
それは違います。綿が洗濯でダメージを受ける原因、それは綿の最大の「長所」の一つである
「吸水性」にあります。綿は水につけただけで、自重の数倍もの水分を吸収する性質があります。
この際、綿の繊維自体が吸水するため、糸が膨潤し、パンパンに膨らんだ状態になります。
このパンパンに膨らんだ状態で、ゴリゴリ洗濯をすれば、当然繊維自体がダメージを受け、
毛羽立ってきたり、シワになったりします。タオルや下着、寝具等ではあまり気にならないかも
しれませんが、おしゃれに着たい衣料品の場合、ある程度の気遣いは必要ですよね。
ある程度の気遣い、って、、、やっぱり素人には洗えないの??
暑い日が続いていますが、先日花火大会に行った際、やはり若い女性の方は浴衣が多いのに
感心しました。「感心」というのは、何も日本の伝統を守ってエライ!と言うよりも、
暑い(浴衣って結構蒸れますよね)、高い(良いものはまあまあ高い)、洗えない(家で洗うと
クシャクシャに、、)にも関わらず、やっぱり圧倒的に「可愛い!」という理由で、皆さん
頑張って着てらっしゃるんだなぁ、と(笑)
浴衣の起源は奈良・平安時代の「湯帷子」(貴族が入浴時に着用)のようですが、それが
一般の人にまで普及するのは、江戸時代中期のこと。吸水性がよく、風通しもいいので、
風呂上がりに着用したり(当時の銭湯は「混浴」が普通だったため「風紀保全」のため(笑))、
寝間着として着られるようになったそうです。夏場に普段着として着られるようになったのは、
明治の頃と言いますので、そういう意味では、今のような「浴衣」というのは、割とまだ歴史は
浅いようです。
「湯帷子」の頃の素材は「麻」でしたが、のちに普及する際には「綿」が中心となったようで、
それぞれの用途に合った使い方のように思います。
綿(コットン)の浴衣は、通常「糊」のついた状態で売られていて、パリッとシワのない平面で
構成されています。それがあの浴衣のいかにも涼しげなフォルムを生み出しているのですが、
残念ながら実際着ていると、だんだん汗を吸ってシワにもなり、形も崩れ、、、花火大会が終わって、
家に帰る頃には、ヨレヨレになってしまった~、という方も多いのではないでしょうか。
さて、散々汗やビールや涙?も吸い込んだ浴衣は、洗わないと来年着られませんが、
浴衣、って皆さん、どうやって洗っているのでしょうか?、、っていうか、そもそも洗えるの??