データ処理の問題、ヘッドの耐久性の問題、染料の発色差異の問題、着弾(液滴サイズ)

コントロールの問題、これらの問題はその後、デザイン作成環境の変化や、ハードの改良、

条件設定の最適化、生地の搬送精度&液滴コントロール技術の進化により、この30年で

大幅な改善が図られました。おかげで今では、かなりのレベルで「普通に」プリントして、

「当たり前に」目標の画像(データ)が生地表面に再現できる、状況となってきました。

ただ、当初から存在する根本的な不良原因だけは、今でもなかなか排除できずに残っており、

日々我々を悩ませています。その根本因とは「生地」は「紙」とは違う、ということです。

生地にプリントするのと、紙にプリントするのには、ほぼ同じ機構を使っており、その意味では

デジタルプリント開発においては、同じ問題を共有し、解消してきた歴史がありますが、

唯一根本的な違いは、媒体である「紙」と「生地」の違いにあります。

では、「紙」と「生地」の何が一番異なるかと言えば、その「均一性」ということになります。

プリント用の「紙」は製紙工場で、一定の品質管理の下、同じ品番であれば、ほぼ均一な品質で

生産されるのに対し、「生地」は、同じ品番であっても、原料も異なれば、糸も異なり、製織や

製編の条件も異なり、精練・漂白の処方・条件も異なる場合もあります。また、製造工程で、

繰り返し洗って→乾燥、ということを繰り返すため、表面が毛羽立っていたり、ゴミや不純物が

付着していたりと、「不均一なことこの上ない」状態なのです。

生地表面に、毛羽立ちやゴミがあれば、その上にプリントしても、そのまま「白抜け」「ムラ」と

いった「不良」に直結します。(なので、インクジェットプリントを行うには、腕のよい

修整屋さんが不可欠でした。(笑))

生地の「白度」もバラつくのが当たり前で(原料も加工条件もばらついているので)、同じ色を

プリントしても、同じ色に見えない、ということも当たり前にありました。

当時開発に携わっていたプリント機メーカーの技術者が、様々な問題に直面し、最後に漏らした

言葉が「結局、生地と紙は違うんですよね。。。」